様々なパターンの裁判例を紹介
介護事故における様々なパターンの裁判例を紹介します。
転倒事故の裁判例
まずは、東京地方裁判所にて、2013年10月25日に判決が下された裁判例です。手すりや杖を利用し、短い時間だけ立位を保持できる利用者が転倒した事案です。この裁判では、転倒防止のために必要な措置を取らず、玄関の段差に立たせたままにしたことが、安全配慮義務に違反しているとして、損害賠償請求が認められました。原告は左大腿骨頸部内側を骨折という大きな怪我を負っており、後遺症も残っています。それらを理由に、約1,720万円の損害賠償請求が認められました。
次に、東京地方裁判所にて、2015年3月10日に判決が下された裁判例です。こちらは原告の請求が棄却されたケースです。通所介護契約にもとづき、原告が転倒しないように十分な注意を払うという義務を負うものの、その内容が抽象的であり、原告が主張するような様態で介助する責務を負っているとは認められず、さらに被告の介護職員が実際に行った介助には明らかな不手際があったとはいえませんでした。加えて、原告の行動に起因する突発的な事故の可能性も残っており、結果的に請求が棄却されました。この裁判例では、原告は被告に対し、自身を椅子に座らせて靴を脱がせる責務を負っていたことや、椅子のある場所まで誘導して座らせて靴を脱がせる、またはそれと類似する程度の注意深さで靴を脱がせるという具体的な義務があったとの主張がありましたが、裁判所はその主張を退けています。
誤嚥事故の裁判例
松山地方裁判所にて、2008年2月18日に判決が下された裁判例です。特別養護老人ホームにおける誤嚥事故において、利用者が死亡し、運営元である社会福祉法人の不法行為責任が認められました。被告の介護職員は医師から嚥下障害の進行具合や誤嚥性肺炎発症の可能性について事前に聞いており、実際に食事をする際にもむせ込む状態が続いていたなどの事実が確認されていたにもかかわらず、食事介助を行う介護職員に対して十分な教育・指導がされていなかったとの判断が示され、事業者側の責任が認められています。
誤薬事故の裁判例
東京地方裁判所にて、2015年4月24日に判決が下された裁判例です。通所介護施設の職員が利用者に対して、本来他の利用者に投与すべき薬を誤って服用させたケースです。こちらは、利用者が内袋に氏名を記載しなかったことに起因したものであるとして、介護施設側から違反はないという主張がありましたが、内服薬を対象者に対して正しく服用させるのは、服薬介助を行う介護施設側の基本的な義務であるとして、該当の主張を退けています。なお、こちらについても介護職員個人ではなく事業者側の使用者責任が問われました。
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